この住宅の敷地は交通量の少ない閑静な住宅街にあり環境はすこぶる良好である。しかし、敷地地盤は道路から1.3m下がったレベルにあり隣には更に2m以上も下がって幅が広めの水路もある。つまり、一般的には扱いにくい敷地であるが、良くも悪くもこれがこの敷地の大きな特徴であり、これを活かして住宅の計画を始めることにした。また、家のサイズは小さく、車1台分の屋根付き駐車スペースを設けることを設計条件としてお施主さんからいただいた。
まずは、新たに擁壁を設けてGLを道路レベルまで上げると建築費用が莫大になることが容易に予想できた。したがって、費用を抑える為にもそれ以外の方法を検討し道路レベルにコンクリートスラブを設ける事にした。このスラブの存在をきっかけに設計を広げていき、各スペースの用途は二重三重に重なるようにすれば小さな家でも重ねた数だけ豊かに暮らすことができると考えた。
住宅として機能的に優れる事は当然満たしながら、それ以上に考えなければならないのは心踊るような魅力をつくりだすことである。GLに近いレベルに第一の床を設ける考えにより必然的に断面構成は高低差を活かしたスキップフロアにすることが望ましかった。そこで、天井高さに変化をつけて空間認識にムラを出し味わい深くすることができれば大きな魅力が生まれると考えた。これは料理に砂糖と塩を使ったり複数の食材のハーモニーを楽しむのと似ているかもしれない。
ここでは隣地に流れる水の音が絶えず聞こえる。水の音を聞いているとなんだか心は和み日常の中にふとした安らぎを感じる。しかし、都会の水路なので決して澄んだ水が流れる小川のようなものではないけれど、この空間に身を置いた時に環境の様々をひっそりと感じることができる日本文化的なものを取り入れようと決めた。そして、メインとなる空間は静かなる光で空間を満たし、開口部はささやかに外部と対話ができるようにした。
道路レベルに設けたコンクリートスラブには屋根をかけ、そこは駐車場であり、水路の水の音を楽しむくつろぎスペースであり、作業場であり時にはパーティースペースであり、玄関ポーチとしても機能するようにした。ここはとても多用途で特別な空間となった。
写真・文:TAKANORI TOGO
多用途な外部スペースとそこから続く階段。外部スペースの床は敷地境界いっぱいまで跳ね出す。外構の植栽はお施主さんご自身の手によるもの。
一番下のフロアは低めの天井高さのリビングルーム。
メインの空間は高い天井。居場所をあちらこちらに散りばめてある。
床には黄色いウールカーペットを使用して大きな面を意識した。
コンパクトにまとめたキッチンとダイニングのスペース。
桧浴槽を中心に選択した仕上げ材は、床と天井が桧、壁はグリーンのタイル。
大きな空間は静かな光で満たし、小さな開口部で外部環境を感じるようにした。
専用住宅:木造2階建て
敷地面積:142.00㎡(42.95坪)
延床面積: 73.00㎡(22.08坪)
外壁:モルタル左官仕上
床:長尺シート・カーペット・桧無垢板フローリング
壁・天井:PBの上EP塗装
キッチン・ダイニングテーブル・デスク:Holly Wood Buddy Furniture
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