2026/01/19
近頃のアウトドア衣料の世界で注目されているアクティブインサレーションであるが、実はアイルランドで古来から漁師さんが着ていた羊毛のアランケーブルジャンパーが同様の機能を備えていることに気づいた。
ところで、アクティブインサレーションとは現代の高度な生産技術と研究によって生み出される最先端の繊維を使用したオーバーヒートしない保温着の総称で、その機能は秀逸だ。種類は様々であるが例えば右側のようなタイプは一見するとフリースのように見えるがとってもスカスカで大袈裟に言うと生地は網のようになっている。しかしこれが大きなポイントで、運動強度が上がってフリースだと汗だくになってしまうような状況でもオーバーヒートしないのだ。更には上にウインドブレーカーなどを羽織ればそのフワフワな生地に空気を含み暖かくなるというなんとも高機能な衣類なのである。
さて、アランケーブルニットであるが元々はアイルランドのアラン諸島の漁師さん達の為に編まれていたセーターだったらしい。ご覧の通りこのニットは編み目が詰まっておらず空気がよく通る。つまり防風性はとても低い。そして、ただの装飾だと思って見ていたケーブル編みは立体的で空気を沢山含む。これを着て寒い日に外を歩いてみると、身体が温まって来ても風がスカスカ抜けるのであまり汗をかかないが、一旦休憩するとほんわか暖かくなってくるので寒くない。正にアクティブインサレーションと殆ど同様の機能を持っていることに驚いた。建築の素材で言うところの調湿機能を持った素材のような感じの印象だ。
よく考えてみるとそりゃそうかもしれない。海の上で働く漁師さん達だって、きっと動けば暑かったし休めば寒かったに違いない。そんな過酷な仕事場があり、古くからの羊毛の産地で必然的に生まれたのがアランケーブルジャンパーだったのだろう。寒い日に上着なしで歩いてみて、このニットの編み方の成り立ちはそんなところにあるのではないかと想像が広がった。
Photo・text:TAKANORI TOGO
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